《スウェーデン伝統料理》
Kantarelltoast
カンタレルトースト
待ちわびた秋の味覚 アンズ茸のトースト
秋の風を感じる頃、北欧の市場で目を惹かれるのは鮮やかなオレンジ色。離れた場所からでもすぐにそれとわかるアンズ茸は特にスウェーデン人が待ちわびる秋の味覚です。
ヨーロッパ三大キノコのひとつであるアンズ茸、スウェーデン語はカンタレル(発音としては“カンタレッル”の方が近い)。フランスではジロールまたはシャントレルとも呼ばれます。日本名のアンズ茸は杏の香りを持つことから命名されたそうですが色もまさに杏のよう。その明るさで、気持ちが沈みがちな秋も楽しく過ごせそうな気持ちにしてくれます。
豊かな森をもつスウェーデンではコケモモと同様に誰もが森でキノコ摘みを楽しむことを認められているため、週末に家族でピクニックを楽しみながらの収穫は今でもよくある光景です。
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優しい味のカンタレルは、バターで軽くソテーしたりクリームと合わせるのが定番。厳しい冬を乗り越える準備期間である秋に、体力をつけて免疫を上げると言われるキノコ類と乾燥した空気に対抗して肌や呼吸器を潤す役割も持つ乳製品。北欧の美味がコラボした秋の薬膳料理は家庭でもレストランでも大人気です。
この時期は多くのレストランでカンタレルトーストがメニューに登場します。注文すると店員さんも「うんうん、やっぱりそうだよね」と嬉しそうで話もはずむ季節の味。見回せば他のテーブルにも次々とカンタレルトーストが運ばれていたり。乾燥品や缶詰に限らず生のカンタレルも一年を通して買える現代ですが、人々が季節の移り変わりを大切にしていることを実感するシーンが多い北欧です。
北欧で人気のあるキノコ
マッシュルームはもちろんのこと、高級品扱いとなるミキイロウス茸や黒ラッパ茸など、魚料理や肉料理とも相性の良いキノコは様々に楽しまれています。
Kantarell(カンタレル)-アンズ茸
Trattkantarell(トラットカンタレル)-ミキイロウス茸_漏斗(Tratt)のような形にちなんだ名前です
Svart Trumpetsvamp(スヴァット・トルンペートスヴァンプ)-黒ラッパ茸
Karljohansvamp(カールヨハンスヴァンプ)-ポルチーニ茸/ヤマドリ茸_カール・ヨハン王にちなんだ名前
Toppmurklor(トップムルクロール)-アミガサ茸
Shiitake(シイタケ)-椎茸
*日本の椎茸もShiitakeとして人気です。産地はフィンランドなど様々
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もちろん毒キノコもあるため自分で収穫をする際には注意が必要です。
話は逸れますが、有名な陶磁器メーカーであるロイヤルコペンハーゲンのフローラ・ダニカシリーズにも猛毒のキノコが描かれたものがありました(コペンハーゲンにあるクリスチャンボー城での展示)。
フローラ・ダニカは直訳するとデンマークの花という意味で、そもそもは1761年以降出版されてきたデンマークの植物学(本草学)図鑑の名前です。現在は集大成として数キログラムもある巨大本に纏められている美しい植物たちの絵を、そのまま磁器に描いたシリーズがロイヤルコペンハーゲンのフローラ・ダニカ。毒キノコであってもその美しさに目を奪われる芸術品です。
ヨーロッパで広く愛されるアンズ茸は、日本では毒キノコとして扱われているという情報もあります。今回調べたところ公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)のサイトでは「もちろん食用になり」と書かれていました。
⇩公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)のサイト
https://www.jataff.or.jp/index.html
⇩アンズタケ(公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)のサイト内)
https://www.jataff.or.jp/kinoko/1101.htm
安全でおいしいキノコを楽しめる現代に感謝したいと思います。
Kantarelltoast
(カンタレルトースト)
アンズ茸のトースト
【材料】2人分
カンタレルソース
・カンタレル(アンズ茸) 200g ⇨ ブラシなどで汚れを払い、硬い石づきがあれば除く
※お店で売られている安全なものをご使用ください
・玉ねぎ 中1/2個(エシャロット2個でも可)
・バター 20g(≒大さじ 1と1/2)
・生クリーム(36%) 100ml(1/2カップ)
・塩・黒胡椒 適宜
・パセリのみじん切り お好みで添える
バタートースト
・サンドイッチ用パン 2枚
・バター 20g(≒大さじ 1と1/2)
【作り方】
1. カンタレルは2cm角程度に切り、玉ねぎはみじん切りにする
2. フライパンを中火で温めてバターを溶かし、玉ねぎを入れて透き通るまで炒める
3. カンタレルを加えて全体が色づく程度に数分炒めたら塩胡椒で味をつける
4. 生クリームを加えて焦げないように混ぜながら、トーストに乗せても流れ落ちない程度まで煮詰める
5. ソースを煮詰めている間、別のフライパンを中火にかけてトースト用のバターを溶かす
6. パンを並べ入れて両面をキツネ色になるまで焼く
7. 一旦キッチンペーパーに取り出して余分な油分を吸収させる
8. 皿にトーストを並べてソースを乗せ、お好みでパセリを飾る
【ポイント】
・カンタレルをカットする大きさはお好みで調整ください
大きめに切ると味わいがしっかりと楽しめますが大きすぎると食べづらくなります
・カンタレルは余分な水分を除く方が美味しくなります
本格的に作りたい場合やたくさんの量を作るときは、温めたフライパンにまずカンタレルだけを入れ、出てきた水分が蒸発してなくなる程度まで炒めてからバターと玉ねぎを加えて炒めます
・パンを三角形になるように半分にカットするとさらにスウェーデン風になります
【楽しみ方】
・たくさん作って余った場合はパスタソースにしても楽しめます
・マッシュルームなど他のキノコでも応用可能です