Kalix löjrom/カーリクス・ロイロム(カーリクス地方ヴェンダースの卵)

 

スウェーデン伝統料理

Kalix löjrom
カーリクス・ロイロム

スウェーデン初のPDO認証(原産地呼称保護制度) シロマスの卵

  

スウェーデン人が誇る「キャビアよりも価値がある」魚卵  

イクラやカラスミなど、日本人が愛する魚の卵は北欧スウェーデンでも大人気です。

スウェーデン語でKaviar(キャヴィア)と呼ばれる魚卵製品。お店にはチョウザメの卵(日本でキャビアといえばこれですね)に限らず、サケやマスなど様々な魚の卵の加工品が並びます。なかでも貴重で別格扱いなのがKalix löjrom(カーリクス・ロイロム)

カーリクス・ロイロムはスウェーデン最北部Norrbotten(ノールボッテン県)のカーリクス地方で獲れる、サケ科で最小の魚Vendance(ヴェンダース_シロマス)の卵です。意味はそのまま「カーリクス(地方)のヴェンダース(魚)の卵」。片手で握れるほどの小さな魚から得られる卵はほんの5g程度で、よくぞ着目したものだと感心するばかり。

カーリクス地方はスウェーデン北部にあります

スウェーデン初のPDO認証 

その希少性もあり、2010年にはスウェーデン製品として初のPDO認証を受けたカーリクス・ロイロム。

EU圏におけるPDO認証(Protected Designation of Origin_原産地呼称保護制度)は製品の品質を保護する知的財産権で、フランス・シャンパーニュ地方のシャンパンなどもそのひとつ。それだけにスウェーデン人が「チョウザメのキャビアよりも価値がある!」と自負するのも無理もありません。

ヴェンダース漁が認めらるのはボスニア湾の最北部。Kalix(カーリクス市)をはさむPiteå(ピーテオー市)とHaparanda(ハパランダ市)の間の海域のみです。この地域はスウェーデン北部の川から綺麗な水が流れ込むことで水が常に入れ替わり新鮮で澄んだ状態に保たれるそうで、海水にもかかわらず塩分濃度は0.3%〜0.35%ほど。その海で小さな甲殻類やプランクトンを餌とするヴェンダースの卵は、明るく澄んだオレンジ色と独特の風味を持つことになるのだとか。

漁自体も、産卵前の短い期間に限られています。解禁日である毎年9月20日から10月25日までの5週間、許可を得た業者(漁師)が週に5日間の漁を行い、水揚げ後は24時間以内に手作業で卵を取り出して洗浄加工、最終的に4%の海塩で漬けたものが出荷されます。そのため通常お店で売られているのは冷凍品、もしくはその解凍品となります。

カーリクス・ロイロムを楽しむ  

特別な魚卵を味わうのにおすすめなのは、トーストに乗せていただく前菜です。カーリクス・ロイロムの繊細さを楽しめるように、合わせるのはサワークリームと紫玉ねぎ、アクセントにディルとレモンを添えて。10年前に初めてスウェーデンを訪れた際、初日のディナーで夫が選んでくれたのはこの一皿でした。そんな貴重なものだとは知りませんでしたが、魚卵らしい生臭さを全く感じない爽やかさに感動したことを覚えています。

王道の前菜(手前のオレンジ色の塊がカーリクス・ロイロム)

 

他にも、老舗ホテルでのアフタヌーンティーでセイボリーに使われていたり。お料理のトッピングに使う魚卵をカーリクス・ロイロムや他の魚卵からチョイスできるレストランもあります。

グランドホテルのアフタヌーンティーにて
こちらのセイボリーにも使われています
トッピングを選べるレストランも

 

スウェーデン国内のホテルであれば、朝食会場ではまず確実にKalles Kaviar(カレス・キャヴィア_魚卵ペースト)を見かけます。こちらは例えるならたらこクリームのような感じ。「カレ(イラストの男の子の愛称)のキャヴィア」という意味で、チューブに描かれているとおりトーストに乗せていただく、朝食では定番中の定番といえる魚卵製品。ゆで卵(卵on卵になりますが)やハム、きゅうりなどと一緒にオープンサンドイッチにするのもポピュラーです。

また自宅料理でもキャヴィアはよく使われます。80歳を超えた伯母が作ってくれるチーズパイも、仕上げはキャヴィアのトッピングです(種類はその時によってさまざま)。

国民的人気のカレス・キャヴィア
ホテルではお一人様サイズにも出会えます
チーズパイにトッピングされたキャヴィア

 

ノーベル賞晩餐会でも提供されるカーリクス・ロイロム

カーリクス・ロイロムは、毎年12月にストックホルムで開かれるノーベル賞授賞式後の晩餐会でもほぼ毎回提供されます。晩餐会メニューはスウェーデンの特産品も意識しているので、PDOを持つカーリクス・ロイロムが使われるのは自然な成り行きでしょう。

※晩餐会が開かれるのは、ストックホルム市庁舎内の「青の間」と呼ばれるホール。その市庁舎の建物内にあるレストラン、Stadhuskällaren(スタッドヒュース・シェラレン_「市庁舎の地下セラー」の意)では、歴代ノーベル晩餐会と同じメニューが楽しめます(要予約)。

⚫︎Stadhuskällaren(レストラン スタッドヒュース・シェラレン)
 https://stadshuskallarensthlm.se/en/
⚫︎ノーベル晩餐会のメニュー一覧(ノーベル財団のページ)
​​ https://www.nobelprize.org/ceremony/menus-at-the-nobel-banquet/

2019年ノーベル晩餐会での前菜はカーリクス・ロイロムを使ったもの(スタッドヒュース・シェラレンにて)

 

魚だけでなく魚卵も愛するスウェーデン。その国のお料理はきっと私たち日本人の口にも合うはずです。スウェーデンに旅行の際はぜひ美味しい魚卵もお楽しみください。

  

  

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このブログの運営者

コペンハーゲン🇩🇰在住の国際中医師。
中医学セミナーと薬膳料理の教室 "Yakuzen Apothecary & Kitchen" を主催。

スウェーデン人の夫と北欧薬膳ライフを実践中です。

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