《スウェーデン伝統料理 番外編》
Nobelbanketten
ノーベル晩餐会のメニュー
ノーベル賞ディナーを楽しめるレストラン
遺言で設立されたノーベル賞
今年もノーベル賞各分野での受賞者が発表されましたね。
ダイナマイトの発明で知られるスウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベル氏の遺産により設立されたこの賞は、1901年以降ストックホルムにあるノーベル財団(Nobelstiftelsen)によって主催され、物理学、科学、文学など多くの分野で『人類に最大の貢献をした人々』に対して授与されてきました。授賞式は毎年、氏の命日である12月10日にストックホルムで行われます。
※平和賞は授賞式・晩餐会ともにノルウェーの首都オスロで開催されます。
スウェーデン国王の列席も賜り警察による交通整理や警護など国を代表する行事は、受賞者の功績に加えて華やかな授賞式や晩餐会も話題にのぼります。
特に晩餐会のメニューはスウェーデンでも注目の的。有名シェフが抜擢されたり、地元の食材を生かして作り上げるメニューは当日まで非公開なのも人々の興味をそそる理由のひとつで、当日は晩餐会を生中継するテレビ局レポーターが晩餐会会場となる市庁舎の別室でゲストと同じメニューをいただきつつ、制作秘話やシェフのインタビューを放送したりと賑やかです。
そしてストックホルムには、この晩餐会と同じメニューをいただけるレストランがあります。
市庁舎にあるレストラン
ノーベル賞の授賞式と晩餐会は別々の会場で行われます。授賞式は市内中心部のコンサートホール。晩餐会はコンサートホールから車で5分ほどのストックホルム市庁舎内にある「青の間」と呼ばれる大ホールです。夫にとっては子供時代、父親の仕事関係でのクリスマスパーティーで毎年訪れていた思い出の場所なのだそうです(現在でも企業などのイベントで使用可能です(個人利用は不可))。
その市庁舎と同じ建物内にあるレストラン Stadhuskällaren(スタッドヒュース・シェラレン_「市庁舎の地下セラー」の意)が、歴代ノーベル晩餐会と同じメニューを楽しめる場所(要予約)。
重厚な扉をくぐって地下への階段を降りると名前の通りワインセラーのような落ち着いた雰囲気。創業は市庁舎が建てられた1922年!! 店内は思ったより広くて個室もあります。市庁舎で結婚式を挙げたばかりの新郎新婦や親族のグループも見かける、エレガントながらアットホームさもある落ち着いたお店です。
⚫︎Stadhuskällaren(スタッドヒュース・シェラレン)
https://stadshuskallarensthlm.se/en/
⚫︎1901ノーベル晩餐会のメニュー一覧(ノーベル財団のページ)
https://www.nobelprize.org/ceremony/menus-at-the-nobel-banquet/
アラカルトも充実しているので普通のレストランとして楽しむのはもちろんのこと、観光客に人気なのはやはりノーベル晩餐会のメニューだそう。しかもこのレストランでは、ノーベル賞が始まった1901年からのすべての晩餐会メニュー、つまり100年以上のディナーメニューを体験することが可能です(要予約)。生まれ年や記念の年にちなんだメニューをオーダーする方も多いとのことでした。
私たちが晩餐会メニューを予約したのは2022年の秋。2020年と2021年は新型コロナ感染症により晩餐会も中止となったため、最新メニューとして提供されていたのは2019年のものでした。
※最新メニューは2名からの予約が可能。それ以前のメニューは10名以上の予約受付となります(2024年時点)。
セッティングにもスウェーデンらしさ
ここでのノーベルディナーの特徴は、食器やグラス、カトラリーなどのテーブルウェアも可能なかぎり晩餐会当日と同じスタイルで提供されること。サーブスタイルも同様で、メインコースは高く掲げて運ばれたシルバートレイから目の前で一人分ずつ取り分けられます。この日サーブしてくださったスタッフは過去2度の晩餐会でもサーブ経験があり、その2ヶ月後に開催される3年ぶりの晩餐会での役割も決まっていると当日を楽しみにしていました。
テーブルに並べられた食器類は、陶磁器やガラス工芸でも有名なスウェーデンが誇るメーカーから。お皿は北欧最古の陶磁器メーカーで日本でも人気のあるRörstrand(ロールストランド)。1898年創業Orrefors(オレフォス)のグラスはゴールドとグリーンで華やかさを添えてくれます。こちらは芦屋サロンでもグラス一式を使用していた、個人的にも思い入れのあるブランドです。
オレフォスのノーベルシリーズは日本の公式サイトでも購入可能なようです(2024年時点)
https://www.kostaboda.co.jp/fs/kotte/c/nobel
前菜・メインコース・デザート
晩餐会のメニューは①前菜②メイン③デザートの3品構成。シンプルながらスウェーデンの伝統的な食材が緻密に組み合わされています。
メニュー表に記載されたペアリングのワインもすべて晩餐会当日と同じもの。この雰囲気を楽しめるだけでも訪れた甲斐があると感じます。
前菜
前菜は定番ともいえるKalix löjrom(カーリクス・ロイロム)を使った一皿でした。スライスしたキュウリ、丸くくり抜いたコールラビのマリネ、ディルとホースラディッシュのソースとのコントラストも鮮やかです。EUのPDO認証を持つカーリクス・ロイロムはスウェーデンが誇る食材のひとつ。見た目と味の両方で晩餐会の招待客を魅了します。
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メインコース
メインコースは鴨を使ったファルシー(右側)。西洋風がんもどきもしくは飛龍頭ともいえるもので、鴨やきのこなどの風味がギュッと詰まっています。可愛らしいビーツやジャガイモ、スモーク椎茸とキャベツの滋味溢れる付け合わせを鴨のソースがまとめます。華やかさは少ないけれどしみじみと美味しさが伝わる一皿でした。
デザート
デザートはラズベリーの三段攻撃。クリーム仕立てにムース、ソルベ。チョコレートも組み合わせた贅沢なおいしさ。ベリーの種類も豊富な北欧ではベリー自体の味も濃厚な気がします。暗く寒い北欧の冬。この色鮮やかさと力強い甘酸っぱさが、暗い気持ちも吹き飛ばして元気をくれるようです。
先に訪れた知人からは「思ったよりシンプルで驚いた」と聞いていたノーベルディナーですが、個人的にはとても満足でした。受賞された方々の素晴らしい業績を称える晩餐会。地元の旬の食材を組み合わせ、美しいけれど会話の邪魔にはならないように食べやすく仕上げられた技術はさすがに素晴らしい。いつか、知っている人が招かれた時にはぜひ感想を聞いてみたいです。
機会がありましたら、手軽に経験できるノーベルディナーをぜひお楽しみください。
⚫︎Stadhuskällaren(スタッドヒュース・シェラレン)
https://stadshuskallarensthlm.se/en/
⚫︎1901ノーベル晩餐会のメニュー一覧(ノーベル財団のページ)
https://www.nobelprize.org/ceremony/menus-at-the-nobel-banquet/